2009年02月08日

1843年 ゾンメロフォン(Sommerophone:獨)

 ユーフォニアムは、アドルフ・サックス(Adolphe SAX, 1814-1894)によって發明されたと言はれることが多いのですが、内外の多くの事典や文献を讀みますと、そのやうな記述が見當らず、1843年にヴァイマール公國の吹奏樂團のリーダーであったゾンマー(Sommer)によって開發されたものである、といふことが記されてゐます。*1

 18世紀中頃(1843年以前)、ゾンマーは、自身が演奏するために「ゾンメロフォン」(Sommerophone、またはゾンマーフォン Sommerphone:獨)といふ樂器を開發しました。これは、カール・W・モリッツ(Carl.W.Moritz)による「テノールテューバ(Tenortuba)」を基に作られたもので、この「ゾンメロフォン」が、「Euphonion」(Euphonion:獨)、または「Euphonic horn」などと呼ばれるようになったとされてゐます。*2

 しかし、ユーフォニアム登場以前の他の樂器と同じく、スケッチや畫像が見つからず、ゾンメロフォンがどのやうな外觀の樂器であるかは謎のままでした。*3

 2003年(平成15年)、筆者は、やうやくゾンマーといふ人物のフルネーム、及びゾンメロフォンの形状を發見するに至りました。*4 イギリスのインターネットサイト「People Play UK」にて、以下の資料が見つかったのです。

 ※ 現在は、こちらで公開されてゐます
 Victoria and Albert Museum
 Home > Collections > Furniture > Musical Instruments > Musical Performance from the 1670s to the Present Day > Image

  sommer01.jpg

 この資料は、1851年にイギリスで開催された大博覧會(のちの萬國博覧會)にて、ゾンマー自身が演奏した「Farewell to the Exhibition」といふ樂譜の表紙です。ゾンマー自身と思はれるゾンメロフォン奏者、フェルディナント・ゾンマー(Ferdinand Sommer)、オルガン奏者、そしてアルバート王子、ヴィクトリア妃(後の女王)、その家族、等が描かれてゐます。

 これを見ますと、ゾンメロフォンの形状は、

・現在のユーフォニアムよりかなり細身
・4本のロータリーヴァルヴを備へてゐる
・テューバ型
・おそらくB管かC管

 であることが、判ります。後にウィーンやドイツで使はれた、テューバ型の「バスフリューゲルホルン」(Bassflügelhorn:獨)に、大変よく似てゐます。

  ゾンメロフォン
  1851年當時のSommerophone

  バスフリューゲルホルン(テノールホルン)
  Bassflugelhorn (Tenorhorn) Ackermann & Lesser 製, Dresden, 19c末-20c初頭の作か *5

 F.ゾンマー自身は演奏家ですので、勿論自分で樂器を製造したわけではありません。彼が名付けた「ゾンメロフォン」は、その製作者らによってさらに改良され、1844年、フランツ・ボックにより「Euphonion」、フェルディナント・ヘルによって「Hellhorn (Euphonium)」として、それぞれウィーンにて特許申請されました。*6

 一方、ベルギーのA.サックスによる「サクソルン属」(Saxhorn:佛)の特許取得は1845年になってからです。*7 サクソルンバスの發明以前に、「Euphonion」または「Euphonium」といふ名称の、BB(またはC)を第一倍音とする金管低音樂器が發明されてゐた事實をもって、ユーフォニアムの元祖はサクソルンバスではなくゾンメロフォンだといふことになるのです。

 また、もしさうなら、F.ゾンマーが演奏したといふ「Farewell to the Exhibition」は、現存するユーフォニアムのソロ曲としては、最も古い曲といふことにならうかと思ひます。殘念ながら、筆者が探し出せたのは樂譜の表紙畫像のみで、曲そのものについては不明です。この資料は、前述の Victoria and Albert Museum に所蔵されてゐるやうですので、いつの日か再演されることを願ってゐます。*8

*1. Clifford Bevan, "THE TUBA FAMILY" (2nd Edition), P.221, Piccolo Press, 2000. 等
*2. 前掲書等
*3. Anthony Baines, "BRASS INSTRUMENTS - Their History and Development" P.258, DOVER PUBLICATIONS, INC., 1993.
*4. Shigeki Saeki, 管楽器「音」故知新 68:「ユーフォニアムの発明者はA.サックス」といわれているけれど… "PIPERS" No.273, P.72, Sugihara Shoten, 2004.
*5. Collection of Hidekazu Okayama (PROJECT EUPHONIUM), "Bassflugelhorn (Tenorhorn)" Ackermann & Lesser Dresden, End of 19 century to early 20 century.
*6. Herbert Heyde, "Das Ventilbrasinstrument", P.217-219, Breitkopf & Härtel, Wiesbaden, 1987, ISBN 3-7651-0225-3.
*7. 前掲書 A. Baines, "BRASS INSTRUMENTS - Their History and Development" P.253.
*8. R. Winston Morris, Lloyd Bone, Eric Paull, "Guide to the Euphonium Repertoire: The Euphonium Source Book", P.8, Indiana Univ Press, 2007.


Copyright(C) 2009 Hidekazu Okayama (PROJECT EUPHONUM http://euphonium.biz/) All rights reserved. | Posted at Feb.08 00:00

| Comment(3) | TrackBack(0) | ユーフォニアムの登場 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
【加筆後】

 2003年(平成15年)、筆者は、やうやくゾンマーといふ人物のフルネーム、及びゾンメロフォンの形状を發見するに至りました。*4 イギリスのインターネットサイト「People Play UK」にて、以下の資料が見つかったのです。

※ 現在は、こちらで公開されてゐます
 Victoria and Albert Museum
 Home > Collections > Furniture > Musical Instruments > Musical Performance from the 1670s to the Present Day > Image

【加筆前】

 2003年(平成15年)、筆者は、やうやくゾンマーといふ人物のフルネーム、及びゾンメロフォンの形状を發見するに至りました。*4 イギリスのインターネットサイト「People Play UK」(http://www.peopleplayuk.org/ 現在アクセスできなくなっています)にて、以下の資料が見つかったのです。
Posted by 岡山(HIDEっち) at 2009年04月02日 04:30
【加筆後】

 また、もしさうなら、F.ゾンマーが演奏したといふ「Farewell to the Exhibition」は、現存するユーフォニアムのソロ曲としては、最も古い曲といふことにならうかと思ひます。殘念ながら、筆者が探し出せたのは樂譜の表紙畫像のみで、曲そのものについては不明です。この資料は、前述の Victoria and Albert Museum に所蔵されてゐるやうですので、いつの日か再演されることを願ってゐます。*8

【加筆前】

 また、もしさうなら、F.ゾンマーが演奏したといふ「Farewell to the Exhibition」は、現存するユーフォニアムのソロ曲としては、最も古い曲といふことにならうかと思ひます。殘念ながら、筆者が探し出せたのは樂譜の表紙畫像のみで、曲そのものについては不明です。この資料は、Victoria and Albert Museum に所蔵されてゐるやうですので、いつの日か再演されることを願ってゐます。*8
Posted by 岡山(HIDEっち) at 2009年04月02日 04:32
【訂正後】

 F.ゾンマー自身は演奏家ですので、勿論自分で樂器を製造したわけではありません。彼が名付けた「ゾンメロフォン」は、その製作者らによってさらに改良され、1844年、フランツ・ボックにより「Euphonion」、フェルディナント・ヘルによって「Hellhorn (Euphonium)」として、それぞれウィーンにて特許申請されました。*6

【訂正前】

 F.ゾンマー自身は演奏家ですので、勿論自分で樂器を製造したわけではありません。彼が名付けた「ゾンメロフォン」は、その製作者らによってさらに改良され、1843年に「Euphonion」、1844年に「Euphonium」として、それぞれウィーンにて特許が取得されました。*6
Posted by 岡山(HIDEっち) at 2009年04月05日 03:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/113724239
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック